[読書メモ]『詳注版 シャーロック・ホームズ全集6』

p17
人間は__少なくとも犯罪者は、こんにちでは、野心と独創性をすっかり失ってしまった。

p18
イギリスの女性に十人に一人はヴァイオレットという名前であった__今日もそうである

p101
医者の仕事の忙しいワトソンが、午前 10 時 45 分という遅い時間に朝食をとったのはなぜだろうか?

pp103-104
ぼくとしては、自分の手で調べてみるまでは、はっきりとしたことは何も言いたくはないがね。

p110
「ところがその状況証拠ってやつが、きわめてくせものでね」ホームズが考え深げに答えた。「ある一点をまっすぐに指し示しているかとおもうと、ちょっと視点をずらしただけで、これまた同じくらいはっきりと正反対の方向を指し示しているものなのだよ。[…]」

p111
明白な事実ほど誤解を招きやすいものはないよ

p112
ぼくはレストレードには絶対用いることのできない、いや、理解すらできないような方法で、彼の理論を確証することも打ち破ることもできるつもりだよ。

p116
不当な処分を受けた人間はいっぱいいるのさ

p125-126
さて、ではしばらくの間、このポケット版ペトラルカ詩集の世界にひたることにして、現場につくまでは事件のことはいっさい口にしないでおくことにするよ。

p128
警部がちょうど言い終えたところへ、私がいまだかつて見たことがないような美しい娘が、部屋の中に駆けこんできた。

p134
そう言うと、彼女は、はいってきた時と同じように、慌ただしく出ていった。

p140
「ターナー嬢のような、うら若き女性との結婚を望んでいなかったというのが事実だとすると、彼の趣味を賞賛するわけにはいかないね」

p144
ホームズはちゃんとした根拠の裏付けなしに行動するような人間ではなかった。

p145
「私は、ホームズさん、事実と取りくむだけで精一杯で、とても理論や空想にひたっているひまはありませんよ」
「そうでしょうな」ホームズがまじめな口調でそう言った。「あなたなら事実と取りくむだけで精一杯でしょう」

pp148-149
警部はホームズの動きにまったく関心を示さず、軽蔑のまなざしでながめていたが、私は、彼の行動の一つ一つがある確固たる目的へ向けて進められていることを信じて疑わなかったので、彼の一挙手一投足を興味深く見まもった。

p192
靴もあちこちの会社の階段をのぼりおりするうちにすり切れてしまい、それでいて職にありつける見込みは依然としてまったくないんです。

p215
その時ふと、ぼくにはさっぱりわからないことでも、シャーロック・ホームズさんならあっさりわかるかもしれない、という考えが頭にひらめいたんです。

p216
ホームズは、彗星ワイン鑑定家のような、満足そうでしかも鋭く吟味するような表情を浮かべてクッションにもたれかかると、私のほうにちらっと目を向けた。

p216
ナポレオン一世時代の 1811 年に彗星が現れ、ひとびとは凶兆と恐れたが、皇帝に男子が生まれた上、ブドウが空前の大豊作となり、この年のブドウで作ったワインは良質なことで歴史的に名高い。このワインを蒸留したブランデーはナポレオン・ブランデーと呼ばれ、以来上等のブランデーに「ナポレオン」という名を冠することとなった。

p235
重大な報道倫理違反である。知事判事が判決を下す前に、新聞はこの男を有罪と決めつけてしまったのだから。

p260
railroad duplicator〔訳注。不明、乞うご教示〕

p263
大柄の、下品な顔をした年配の女性が、エプロンをしたままはいってきたのです。

p269-270
「それはきわめて重要なことです」ホームズはそう言うと、シャツのカフスに何か書きとめた。

p269
ビッグ・ベンがある。その鐘の音は、周囲半マイルの範囲にある鐘の音などかき消してしまうほど大きい。

p296
可能性があるわけだから、それを無視するわけにはいくまい。

p311
ホームズは、いったんそう心に決めると、まるでアメリカン・インディアンのような無表情な顔になるので、彼が捜査の状況に満足しているのかどうかは、まったくわからなかった。

p316
依頼人のこの話は、シャーロック・ホームズに異常なまでの影響を与えたようだった。ホームズは椅子から立ちあがると、興奮を抑えきれない様子で、部屋の中を歩きまわった。

p329
「(ホームズの)あざやかな仕事ぶりを何度もこの目で見てきているからね」

p336
ここにいるワトソンにきけばわかることですが、私は芝居がかったことをやりたくなると抑えきれなくなるんです[。]

pp344-335
「あなたのこんどの事件の一番の難点は」ホームズが、例の講義口調ではじめた。「証拠がありすぎるってことでした。そのため、最も肝心なことが、どうでもいいことの陰に隠れてしまったのです。

p356
細心な推理家なら、相手が心の中で何を考えているかだって、ぴたりと当てることが出来るという話さ。

p357
人間の顔はその人の感情を表すためにあるんだが、君の顔つきも君の忠実な召使いだよ[。]

p367
あたしは引っ込み思案で、隠居同然の暮らしなんですよ。

p381
単純な事件ではあるが、教訓的な点も一つ二つあったね。

p385
この事件に関しては、僕の名前は絶対に出さないでおいてほしいな。難事件の場合にだけ僕の名前が残るようにしたいんでね。

p387
まずこの事件には、君も覚えているだろうが、我々は白紙の状態で手をそめた。このことがいつでも有利なんだ。先入観がなかったからね。

p413
何か目的がなければならない。さもなければ、この世はただの偶然が支配する場所になってしまうが、そんなことは考えられない。

pp447-448
ところがぼくは生来強情なたちで、物事に邪魔が入るとますますもってそれをやり通したくなるんです。

p478
私は暖炉の前にすわって、寝る前のパイプをふかし、小説本をひろげてこっくりこっくりやっていた。

p479
軍人の上着には、ハンカチをしまっておくポケットがなかったから。

p482
君が問題のポイントのいくつかを自分の手の内に握って、読者に教えないことで成り立っている効果なのだから、まったく上っ面だけのものさね。

p496
ワトソン、以上の事実を総合してから、パイプを続けざまにふかして考え、根本的に重要な事実と、単なる偶発的事実をきり離そうとした。

p501
動揺した女がよくやることだが、急いでお茶を飲みたいと言った。

p511
ホームズは感情を隠すのが得意だが、心中の興奮を抑えているのが私にはすぐにわかった。一方私はといえば、彼の捜査に同行する時はいつもそうであるが、半分は狩猟気分、半分は頭の体操の快感を覚えていた。

p514
「なんということだ! あなた自身警察の人ですか」
「いいえ」
「では、あなたに関係ないことじゃありませんか」
「正義は何人といえど関係ないと言ってはいられません」

p514
彼を殺したのは正しい神の裁きです。

p560
ぼくの見るところ、エクルズは何の魅力もない。とりたてて聡明でもないし__頭のめぐりの速いラテン系の人間と気性が合うとは思えぬ男だ。

p563
いいねえ、ワトソン、今日は冴えてるね[。]

p563
じっと堪え忍んで魂をかちとるよりほかないね。

p577
彼は彼の習慣に従って何も言わなかったし、私は私の習慣に従って何も聞かなかった。

p591
幸いと言ったが、ぼくの方からそういう人間を見つけようとしなければ、そんな幸いもあり得なかったろうね。

p613
「ワトソン、混沌たる事件だったね」と、夜のパイプをふかしながらホームズが言った。
「きみお好みのきちんとした形にこいつをまとめてみせるのは大変だろうな。[…]」

p621
「邪魔でなけりゃ、ぼくもぜひ行ってみたいね」と私は言った。
「いやワトソン、きみに来てもらえば大いに助かる。それにきみにとっても、けっして時間の無駄にはなるまい[…]」

pp627-628
事件の状況をはっきりさせるには、他人に話して聞かせるのが一番だ[。]

詳注版 シャーロック・ホームズ全集〈6〉 (ちくま文庫)
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