[読書論] 注付きホームズ物語を読む

今月にホームズ読書会に参加するので、課題本の『バスカヴィル家の犬』をいろいろな出版社のバージョンで読み比べています。

角川文庫のホームズ物語は初めて読みましたが、注が割注(わりちゅう)であることが他の出版社と異なっています。つまり注を入れたい箇所のすぐ下で、1行を2行に割って注が入れられています。さらにその注は括弧でくくられています。

割注のいいところは最小限の視点移動で注を読めることです。ページ端や、ましてや章末、巻末の注はページをめくる手間があったり(注のページを指で挟んでおいたり、しおりを2つ使ったりしますよね?)、読んでいる場所を見失いかけたり、あちこちページをめくるので目が回る、といったデメリットがあります。

逆に割注の欠点は、注があまり長い文章にできないことです。最小限の説明にならざるを得ません。

ただ角川文庫で『バスカヴィル家の犬』を読んでいて気付きました__別に注はなくてもいい、と。たしかにホームズ物語は 100 年以上前に書かれていたりするので現代の、さらには日本人には分かりづらい、あるいはチンプンカンプンの言葉や描写があります。でもそれはそれで文脈からなんとなく分かるので、厳密な定義や説明がなくても読み進める上では問題がなかったりします。もちろん物語の核心に関わる部分なら注が必要かもしれませんが。

そういうわけで、角川文庫は最小限の注で、視点移動も少なく、スラスラ読めて快適でした。注をガッツリ読んで勉強するぞという意気込みなしでも気楽に読めます。

もちろん電子書籍になると話は変わってきます。注の番号をタップすれば注にジャンプし、再び「戻る」ボタンですぐ該当箇所に戻れます。注の分量もいくらでも長くできます。

電子書籍と関連して、私はちくま文庫のホームズ・シリーズは自炊して PDF にしています。その PDF で全集を iPad に入れて持ち歩いているので、いつでも読んだり調べたりできます。ちくま文庫のホームズ物語の注はページ下半分が注なので PDF でも比較的読みやすいです。これが章末や巻末の注だとしたら PDF の場合ページめくりが面倒なので大変でした。もちろんハイパーリンクを張ればそういう問題も解決しますが、自炊した PDF にはリンクが張られていません。自分でリンクを張るとすれば、注の量が多ければ大変な作業になります。

最後に主な出版社の注の扱いをまとめておきます。

新潮文庫;割注
創元推理文庫:章末注
河出書房新社 単行本:巻末注(詳注)
河出文庫:巻末注
ちくま文庫:ページ下半分(詳注)
光文社文庫:巻末注
角川文庫:割注

私が確認できる限り、ページ末(縦書きの場合左ページの左端)に注がある出版社はありませんでした。

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